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千葉地方裁判所 昭和52年(ヨ)185号 決定

債務者 三里塚芝山連合空港反対同盟

債権者 新東京国際空港公団

訴訟代理人 近藤浩武 渡邊剛男 大喜多啓光 鈴木智旦 脇征男

主文

千葉地方裁判所執行官は、債権者の申立てにより別紙物件目録記載の物件を仮に適当な方法で除去することができる。

理由

債権者の本件仮処分申請は、その被保全権利及び必要性につきその疎明充分であるからこれを許すべきものである。

なお、当裁判所は疎明資料に基づき、本件につき生ずる幾多の法律問題を検討したが、そのうち重要なるものを以下に付記する。

一  被保全権利について

本申請の被保全権利は航空法四九条二項に基づく除去請求権である。右請求権は航空機離発着の安全を確保するため、右規定により空港設置者に創設的に与えられた権利であると解される。

二  債務者を反対同盟とすることについて

本件第一、第二鉄塔はいずれも三里塚芝山連合空港反対同盟(以下反対同盟という)が建設したものであるが、そのうち第二鉄塔については一〇万人共有化運動をすすめ多数人にその共有持分権を譲渡したことをうかがうことができる。しかし、その目的は鉄塔除去の法律的手続を複雑にして鉄塔除去を困難ならしめようとするものであつて、反対同盟にはこれにより、鉄塔に対する管理支配権までも移転する意思はなく、右鉄塔は依然として反対同盟の支配占有下にあり、他方共有者と称する者も、反対同盟の運動目的に共鳴し、その手段として共有名義人となつただけで、右運動目的を離れて鉄塔の共有者となるという意思がないことは明らかであり、また所有権(持分権)の重要な要素である管理支配権を取得する意思や、その経済的価値を把握しようとする意思にも欠けるものと推認される。現に共有者と称する者の中には遠隔地に居住していて鉄塔を管理することが事実上不可能な者も少なくないことが認められる。また、鉄塔は、社会経済的にみて通常多数者の同時的な利用の対象とはなりにくい物であり、共有者となる者も通常の利用を予定しているものでないことは明らかである。なお、一〇万人共有化ということになれば、実質的な意味での所有権(持分権)の移転の観念は稀薄化し、それぞれの持分権の価値は無視できる程極微化するというべきであるから一〇万人共有化運動自体その当事者間に実質的な所有権(持分権)移転の意思を欠く証左というべきである。

従つて、一〇万人共有化運動は、所有権(持分権)移転の意思を欠くにもかかわらず、外形的にはその意思があるかのように装い共有持分権譲渡の意思を表示したものというべきであるから、右持分権譲渡の意思表示は通謀虚偽表示に該当し無効である。この場合、譲渡代金は鉄塔持分権譲渡に名を借りた資金カンパに過ぎないものとみるべきである。

仮に鉄塔持分権の譲渡が通謀虚偽表示に当らないとしても、共有者が右持分権を主張して鉄塔除去を阻止することは権利の乱用に該当し許されない。すなわち、反対同盟は法律によつて制限表面の上に出る高さの障害物件を設置することが禁止(航空法四九条一項)されており、それに違反すれば処罰(同法一五〇条二号)されることを知りながら空港開港実力阻止の手段として敢えて鉄塔を設置したものであるから、その動機及び目的において不法であり、また共有者は右の事情を十分に知りながら新東京国際空港公団に対する害意をもつて鉄塔の持分権を取得したものであり、反対同盟とともに法律によつてその存続を禁止されている鉄塔を、法律関係を複雑化することによつて引き続きその存続を図ろうとするものであるから、これまたその動機及び目的において不法であるということができる。しかも共有者自身もまた鉄塔持分権の取得によつて鉄塔の除去義務を右公団に対して負担するに至つたものであり、右公団に対してその存続を主張できる法律的立場にはない。また一〇万人共有化運動によつて取得した共有者の持分権の価値は微少なものであることは前述したとおりである。このような事情のもとにおいて、共有者がその持分権を主張して鉄塔除去に反対し空港開港という大いなる公益の実現を阻むことは権利の乱用に該当し許されない。

以上のとおりであるから、本件仮処分申請の債務者は前記鉄塔を建設してその所有者となつた反対同盟としなければならない。なお、反対同盟は委員長がこれを代表するいわゆる権利能力のない社団である。

三  航空法四九条一項につき補償規定がないからといつて同条項が憲法違反とはならないことについて

一般に法が公共のために必要な規制をしたため、国民に財産上の犠牲が生じたとしても、それが一般的に当然に受忍すべき制限を定めたものであつて、特定の人に対し特別に財産上の犠牲を強いるものでないときは、憲法上補償を要しないことは最高裁判例の示すところである(昭和四三年一一月二七日大法廷判決、刑集二二巻一二号一四〇二頁)。

航空法四九条一項で定められた規制は、公共用飛行場における航空機の航行の安全を確保するために課されるもので、その制限の態様は進入表面、転移表面及び水平表面に突出する物件の設置等を禁止するに止まり、その制限の範囲内においては、権利者は自由にその権限を行使しうるものであるから、財産権の本質的価値を剥奪または制限するものとはいえず、さらにその支配する財産に基因する公共の安全に対する侵害を防止する責務の遂行の結果として負うものであり、その犠牲はその者が社会的生活を営む者の一員として荷なう社会的責務を果すにつき当然に受忍すべきものであつて、いわゆる特別の犠姓には該当しないと考えられる。また右規定の定め方自体としても、特定の人に対し特別の犠牲を強いるものとはいえない。従つて、航空法四九条一項の定める規制は、憲法上の補償を要する規制ではなく、同法五〇条一項に定める補償規定は、政策的観点から設けられたものと考えるべきである。

以上により、主文のとおり決定する次第である。

(裁判官 渡邊桂二 東原清彦 井上繁規)

物件目録

(一) 千葉県山武郡芝山町岩山字金垣一八八二番二

畑所在の鉄塔(高さ三〇・八二メートル) 一基

(通称 第一鉄塔)

(二) 同県同郡同町岩山字押堀一八九八番九

畑所在の鉄塔(高さ六二・二六メートル) 一基

(通称 第二鉄塔)           以上

妨害物除去仮処分命令申請書

債権者 新東京国際空港公団

債務者 三里塚芝山連合空港反対同盟

申請の趣旨

千葉地方裁判所執行官は、債権者の申立てにより、別紙物件目録記載の物件を仮に適当な方法で除去することができる。との裁判を求める。

理由

一 当事者

1 債権者は、新東京国際空港公団法(以下「公団法」という。)に基づき、新東京国際空港(以下「新空港」という。)の設置及び管理を効率的に行うこと等により、航空輸送の円滑化を図り、もつて航空の総合的な発達に資するとともに、我が国の国際的地位の向上に寄与することを目的として(公団法一条)、昭和四一年七月三〇日設立された法人であつて〈証拠省略〉、右の目的を達成するため新空港の設置及び管理を行うこと等をその業務とするものである(同法二〇条)。

2 債務者三里塚芝山連合空港反対同盟(以下「反対同盟」という。)は、千葉県成田市に新空港が設置されること(公団法二条、新東京国際空港の位置を定める政令)に絶対反対することを目的として、同市三里塚、同県山武郡芝山町その他新空港予定地内外の住民の一部(当初は約一〇〇〇名と称せられていた。)により昭和四一年七月ごろ結成された団体であり、その組織は、代表役員として委員長が置かれ、その下に事務局、行動隊、青年行動隊、婦人行動隊、老人行動隊等の機構と、副委員長、事務局長、上記各行動隊の隊長等の役職が置かれており、委員長、副委員長、事務局長及び各行動隊長並びに事務局員中の会計責任者及び連絡責任者が幹部会を構成し、更に右幹部会員及び各部落ごとに二名ずつ任期一年で選出される実行委員をもつて実行役員会が構成されており、反対同盟の基本方針は、通常、実行委員会に諮つた上、幹部会において決定している。反対同盟は、その資金を反対同盟員から一人毎月三〇〇円ずつ徴収する会費及び支援者からの寄附によつて賄つており、その委員長には、結成以来戸村一作が選任されている。反対同盟の構成員は、反対同盟の決定に従い、新空港の建設に絶対反対する意思を集団行動により表明し、また、実力をもつて債権者の新空港建設業務を妨害する等の行動を反復している〈証拠省略〉。

以上のとおり、債務者は、委員長がこれを代表するいわゆる権利能力のない社団である。

二 被保全権利

新空港の設置者である債権者は、債務者に対し別紙物件目録(一)及び(二)記載の各鉄塔の除去を求める請求権を有する。

すなわち、

1 債権者は、新空港の設置に関して運輸大臣が公団法二一条の規定により策定指示した基本計画に基づいて、新空港の工事実施計画を作成した上、昭和四一年一二月一三日、同大臣に対し、航空法五五条の三第一項の規定による右工事実施計画の認可を申請した〈証拠省略〉ところ、同大臣は、同四二年一月二三日これを認可し〈証拠省略〉、同条二項において準用する同法四〇条の規定により、同月三〇日運輸省告示三〇号をもつて飛行場の位置及び範囲、着陸帯、進入区域、進入表面、転移表面、水平表面、供用開始の予定期日等を告示した〈証拠省略〉。

右告示によれば、新空港の着陸帯A(長さ四一二〇メートル、幅三〇〇メートル)南東側進入表面は、同着陸帯南東部短辺(別添図面1ハ及びニを結ぶ線)に接続し、外側上方に水平面に対して五〇分の一のこう配を有する平面であつて、その投影面が進入区域(同図面ハ、ニ、ヲ、ル及びハの各点をそれぞれ順次に結んだ線によつて囲まれる区域)と一致するものをいうと定められている(同告示五(一))。

2 航空法五六条において準用する同法四九条一項は、何人も、公共の用に供する飛行場について同法四〇条の告示があつた後においては、その告示で示された進入表面の上に出る高さの建造物等を設置してはならない旨、また、同条二項は、飛行場の設置者は、前項の規定に違反して設置した物件の所有者等に対し、当該物件を除去すべきことを求めることができる旨規定している。

3 債務者は、専ら新空港の供用開始を阻止する目的をもつて、

(一) 昭和四六年五月中旬ころ、別紙物件目録(一)記載の土地上に同目録記載の鉄塔(以下「第一鉄塔」という。)一基を、

(二)昭和四七年三月下旬ころ、別紙物件目録(二)記載の土地上に同目録記載の鉄塔(以下「第二鉄塔」という。)一基を、

それぞれ設置し、現にこれを所有している〈証拠省略〉。

4 右各鉄塔は、次に述べるとおり、いずれも前記告示による進入表面の上に出る高さの建造物であり、航空法五六条において準用する同法四九条一項の禁止規定にてい触するものである。

(一) 第一鉄塔は、別添図面1中Aと表示しである地点に所在し、ハ及びニを結ぶ直線の中心点Cを基準とすれば、ル及びヲを結ぶ直線の中心点Dを見通した線の左〇度四二分の方向、一〇三九・八二メートルの距離にあり、したがつて進入区域内に存し、

またその高さは、地表から三〇・八二メートルである。他方、C点とA点との標高差は〇・九四メートル、A点における進入表面の高さはC点を基準とした水平面から二〇・七九メートルであるから、結局、第一鉄塔は一〇・九七メートル進入表面の上に出ていることとなる(別添図面2参照、〈証拠省略〉)。

(二) 第二鉄塔は、別添図面1中Bと表示してある地点に所在し、前記進入区域内のハ及びニを結ぶ直線の中心点Cを基準とすれば、ル及びヲを結ぶ直線の中心点Dを見通した線の左一度〇四分の方向、七五七・七三メートルの距離にあり、したがつて同じく進入区域内に存し、またその高さは、地表から六二・二六メートルである。他方、C点とB点との標高差はマイナス六・六四メートル、B点の進入表面の高さはC点を基準とした水平面から一五・一五メートルであるから、結局、第二鉄塔は四〇・四七メートル進入表面の上に出ていることとなる(別添図面2参照、〈証拠省略〉。

5 以上のとおり、右各鉄塔は、いずれも前記告示で示された進入表面の上に出る高さの建造物であつて、航空法五六条において準用する同法四九条一項の規定に違反して設置されたものであり、しかも鉄塔としての構造上いずれも一体をなすものであるから、債権者は、債務者に対し、同法五六条において準用する同法四九条二項の規定により、右各鉄塔の全部を除去すべきことを求める権利を有する。

6 債権者は、債務者に対し本件各鉄塔を除去するよう再三請求した〈証拠省略〉が、債務者は、新空港の開港を絶対に阻止することを目的とするものであつて、本件各鉄塔を死守することを公言してはばからず、債権者の除去請求に応じようとしない〈証拠省略〉。

三 仮処分の必要性

債権者には、本件各鉄塔の早急な除去を求める緊急の必要性がある。

1 新空港の工事は既に完了しており、航空輸送の円滑化を図るためには一日も早くその供用を開始しなければならない必要性が切迫しているところ、本件各鉄塔の存在することが新空港の開港を妨げている。

(一) 東京国際空港(羽田)は、現在我が国における最も重要な国際空港であるが、経済の成長、国際交流の進展、航空機の技術革新等に基づく国際的及び国内的な民間航空輸送に対する需要の増大により、同空港における航空機の発着回数は著しく増加し、昭和四五年度においては一日平均四四八回に達し〈証拠省略〉ほぼ同空港の処理能力の限界に達した。

このため、運輸省は、航空輸送の安全性を確保する観点から、昭和四五年八月二一日、同四六年九月一日及び同四八年一月一日の三回にわたり、各航空会社に対して減便その他諸種の規制を行う非常措置を採らざるを得なくなり、昭和四六年以降は発着回数を一日当たり四六〇回に制限して運用している〈証拠省略〉が、最大の混雑時には、航空機がほぼ二分に一機の割合で発着するという国電のラツシユアワー並みの混雑となつている〈証拠省略〉。また、現在三二箇国にのぼる外国の航空会社が、我が国に対して新規に路線の開設を要望しているが、東京国際空港の処理能力がほぼ限界に達しているため、やむを得ずこれらの要望を受け入れることができずに経過しており、このような事態が長期に及んでいるので、これらの国との文化的経済的交流を阻害するとともに、親善友好を損ない、国際問題化するおそれさえある状況である〈証拠省略〉。

以上のとおり、東京国際空港の混雑状況を解消し、同空港の処理能力を超えている航空輸送のひつ迫した需要を満たし、かつ、航空輸送の安全性を確保するため、新空港を至急開港することが必要である。

(二) ところで、債権者は、工事実施計画に定められた新空港の四〇〇〇メートル主滑走路及びこれに対応する誘導路、エプロン、管理事務所、旅客取扱施設(ターミナルビル)、貨物取扱施設、消化救難施設等諸施設の工事をすべて完了した〈証拠省略〉ので、昭和五二年中のできるだけ早い時期に公共用飛行場としての供用を開始する(開港する)ことを予定している〈証拠省略〉が、開港に必要な諸手続を進めるためには本件各鉄塔を早急に除去しなければならない。すなわち、以上の諸施設の工事の完了後これに続く開港に必要な手続として、債権者は、右飛行場本体、航空無線施設及び航空燈火の各工事について、それぞれ運輸大臣の完成検査を受けなければならないが(航空法五六条において準用する同法四二条)、航空無線施設については、債権者が昭和四七年三月一日既に完成検査を申請したにもかかわらず、進入表面の上に出る本件各鉄塔が存在することにより、完成検査の一内容である飛行検査の実施が不可能であるため、結局完成検査の手続は中断されたままとなつており〈証拠省略〉、またその余の工事についても、本件各鉄塔が存在するため、債権者は完成検査の申請を差し控えざるを得ない状態にある。しかも、新空港の供用を開始するまでには、新空港に乗り入れる航空機の機長が航空法七二条一項所定の運輸大臣の認定を受けるために実施する慣熟飛行に要する期間及び航空機乗組員等に対する航空情報の周知徹底(航空法九九条等)に要する期間が必要であるから、昭和五二年中のできるだけ早い時期に開港を実現するためには、早急に本件各鉄塔を除去し、完成検査を受けることが必要である〈証拠省略〉。なお、鹿島港及び千葉港から新空港までの航空燃料の輸送については、右両港から成田市土屋までは鉄道により、土屋から新空港まではパイプラインによる計画であるが、このうち右輸送に必要な土屋から新空港までの諸施設は既に完成している。また、鉄道輸送のうち、鹿島港から土屋までの輸送については既に沿線市町との間で協定が成立しており、千葉港から土屋までの輸送についても、ほとんどの沿線市町との間で近く事実上の合意が成立する見込みであり、開港までに沿線全市町との間で協定の成立に至る予定で鋭意努力している〈証拠省略〉。

2 債権者は、本件各鉄塔を早急に除去しなければ、著しいかつ回復し難い損害を受けるおそれがある。

債権者は、新空港の建設のため、昭和五二年一月末までに約二四〇〇億円を投下して、既に四〇〇〇メートル主滑走路及びこれに対応する諸施設を完成しているのであつて、万一本件各鉄塔が直ちに除去されず、そのために予定した開港が遅延するようなことがあれば、このような大規模な施設の遊休化をもたらすとともに、一日約八五〇〇万円と予測される営業収入を喪失せざるを得ないのである〈証拠省略〉。

なお、新空港の関連公共事業費として、昭和五〇年度までに約二六八〇億円が支出されており〈証拠省略〉、また、新空港用地の提供者で組織する成田空港転業者対策協議会を初め新空港の関連業者等は、債権者及び運輸大臣に対し、開港遅延によつて深刻な経済的損害を受けるとして、新空港の早期開港を繰り返し要望している。したがつて、もし新空港の開港が遅延すれば、社会的にもじん大な影響を及ぼし、ばく大な経済的損害を生じさせる結果となることは明らかである〈証拠省略〉。

3 右のとおり、債権者は、新空港を早急に開港する必要に迫られており、そのためには本件各鉄塔を除去することが必要不可欠であるのに対し、本件各鉄塔は、そもそもこれを設置すること自体が法令に反して許されないものであるのみならず、債務者は、専ら新空港の開港を阻止する目的で右各鉄塔を建設しこれを所有しているもので、債務者の右行為は同鉄塔について使用収益等通常の経済的利益を目的とするものではないから、本件仮処分によつて債務者が法的保護に値する回復不可能な損害を受けるとは到底言えない。

四 以上のとおり、債権者は、本件各鉄塔の除去を債務者に命ずる本案判決の確定を待つていては回復困難なじん大な損害を受けるところ、債務者は、新空港を廃港に追い込むまでは本件各鉄塔を死守し、鉄塔除去の強制執行が行われる場合には各鉄塔に黒山のように反対同盟員等を登らせて鉄塔を「人塔」と化して執行を阻止する旨を宣明しており〈証拠省略〉、現在、第二鉄塔中段に執行阻止の実力行動を行う「決死隊」の立てこもる鉄製の箱を更に増設する等して同鉄塔の「要さい化」工事を進めている次第であつて〈証拠省略〉、以上のような債務者の態度に照らせば、債務者に対し本件各鉄塔を除去すべきことを命ずる仮処分が発せられたとしても、債務者が右仮処分によつて命ぜられた右各鉄塔の除去義務を任意に履行することは全く考えられない。よつて、債権者は、申請の趣旨記載のとおり、直せつに、債権者の申立てにより執行官は本件各鉄塔を仮に除去することができる旨の裁判を求めるため、本件仮処分申請に及ぶものである。

物件目録

(一) 千葉県山武郡芝山町岩山字金垣一八八二番二

畑所在の鉄塔(高さ三〇・八二メートル) 一基

(二) 同県同郡同町岩山字押堀一八九八番九

畑所在の鉄塔(高さ六二・二六メートル) 一基

図1 妨害鉄塔位置関係図

図2 妨害鉄塔高さ関係図

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